山口周さんの『仕事選びのアートとサイエンス』を読んだ。
この本では、いわゆる転職本とは一線を画すキャリア論を説いているのだが、そのなかでも一番刺さったのが、自分にとっての「いい偶然」をいかに引き起こすか?という観点。
天職が、思いも寄らない時期と場所で他者から与えられるものであると考えた場合、そのような偶然をより良い形で起こさせるための思考様式や行動パターンこそが、「天職への転職」に最も必要な技術なのではないか、というのが私の考えです。
スタンフォード大学のジョン・クランボルツ教授による米国のビジネスマン数百人を対象にした調査によって、キャリア形成のきっかけは80%が「偶然」であることが分かったという。その結果が、山口さんの考えの根拠になっている。
彼はこの調査結果をもとに、キャリアは偶発的に生成される以上、中長期的なゴールを設定して頑張るのはナンセンスであり、努力はむしろ「いい偶然」を招き寄せるための計画と習慣にこそ向けられるべきだと主張し、それらの論考を「計画された偶発性=プランド・ハプンスタンス・セオリー」という理論にまとめました。
個人的には、キャリアの長期的な方針は持っておいたほうがいいと思っている派だが、この発想には自分の経験からも概ね同意である。
というのも、我が身を振り返ってみても、キャリアにおいて経験してきたいくつかの転換点において、そのほとんどが偶然によってもたらされてきたものだと実感しているからだ。実際に、親しい身の回りの人からより、数回会ったり、Web上でやり取りしたことがある程度の人からふとしたタイミングで、きっかけをいただいてきたことのほうが多い。いわゆる「弱いつながり」だ。
弱いつながりが減ってきた
個人的に、この数年間のコロナ禍によるいろんな制限や、居住地が都心から離れたりしたこともあり、この弱いつながりがどんどん減ってきているように思う。さらに、育児をするようになって、より一層社交の機会がなくなってきているのも事実。
これまでのキャリアの転機が、 貴重な弱いつながりによってもたらされてきたとすれば、これは今後に向けては大きな問題になってくる。
少ないながら過去の貯金でやりくりして今に至るが、未来の弱いつながりは今の行動によってもたらされるものなので、この状況はなかなかマズいと思っている。
なので、これからは自ら意識して弱いつながりを作り出すなど努力をして、いい偶然を引き起こしていかないといけない。
どうやって弱いつながりを作るか?
本書にもその方法はいくつか提示されているが、個人的に大事だと思うのはやはりなにか発信していくことだと考えている。
学生時代から考えても、どんな形であれなにか発信したことが契機となって、いい偶然を引き起こしてきたからだ。やはり発信しないことには自分の存在は知られることはないので、そもそもつながりすら生まれない。
加えて、住環境や家族の事情によって、頻繁にいろんな人に会うのが難しいのは事実なので、非同期的なコミュニケーションを取れるという意味でも、なんらかのコンテンツを作って発信することはいまの自分の状況にフィットしていると思う。
その他の方法としては、いま現在シンプルに人と会う機会が少なすぎるので、もうちょい外に出て人に会う、というのもある。ここはもう、「最近1年以内に会ってない人に、月に1回以上会う」みたいな KPI を設定するくらいでもいいのかもしれない。