新卒で入った会社でお世話になった先輩が、「おれはどんなポジションについてもちゃんと”機能”する存在であればそれでいいと思ってる」という旨のことを言っていたことがあった。ようは、プロジェクトにはいろいろな人が関わるので、その役割を各人がちゃんと全うすれば価値は自ずと生まれる、ということを伝えたかったんだと思う。
最近、「LINEDAY」というWebアプリケーションを作った。これは釣り人が、自分のリールにいつラインを巻いたか記録するためだけのアプリケーションである。作った理由は、なにを隠そう僕が欲しかったから。釣りに行く前日になると、いつも「このリール、いつライン巻いたっけ…?」と分からなくなってしまうので、それをなんとか解消したいと思い、その解決策のひとつとして作った。自分のために作ったものなので、自分だけがアクセスできればよいのだが、おそらく同じように困ってる人もいるだろうと考えて誰でも使えるように公開した。
で、公開して数ヶ月経ったが、まあ、ぼちぼち使われているといったところだろうか。自分以外全く使わないことも想定していたので、それよりは使われているなという印象で結構嬉しい。そして何よりうれしいのが、「これ便利ですよね」「こんなのが欲しかった!」と言ってくれる人がちょこちょこいること。自分が作ったものが誰かの役に立っていることが直接的なフィードバックとして実感できるので、作者としてこれ以上ない喜びである。
これまでWebの仕事をしてきて、いろんな記事やサイトを作って公開してきたが、僕はどちらかというと「多くの人の耳目を集めて注目される」ものを作るより、「地味でも、規模は小さくてもいいので確実に役立つ機能」を提供することのほうが好きだなと気づいた(もちろん、それが両立できるのがベストだけど……)。きっぱりカテゴリ・ジャンル分けはできないけど、ざっくりとして方向性の話。
上記の「LINEDAY」にしても、僕以外に1人でも使っていてくれていたら、もうそれだけですごく嬉しい。作った甲斐があったなと思う。それくらい「規模」はどうでもよくて、ほんの少しの人にでも「便利やな〜〜」と思って使ってもらえればいい。
例えば、Webの制作物でいうと、なにかの管理画面が分かりやすい例になる。それは一般公開せず、公になるものではない。裏で関係者が必要に応じて使うものである。そういう管理画面を、快適に使えるものに作り上げ、そしてユーザに「使いやすい」と思ってもらえることに価値を感じる。他には、作ったWebサイトやWebメディアがちゃんと更新され運用されていることも嬉しい。それは、クライアントの広報ツールとして、そのサイトがちゃんと「機能」していることを意味するからだ。
もちろん、今はまだいろんなタイプの仕事をして経験値を貯めたいフェーズであって、選り好みしたいわけではない。が、自分の指向としては、そういう価値を提供できるものを作りたい、と思った次第。